一定期間更新がないため広告を表示しています
今回はちょっとだけマニアックな話。
ま、普通のリスナーの方には、正直どうでもいいような話です。
キンクスには、所謂“幻の”と呼ばれるアルバムが2枚あります。
1枚は「The Village Green Preservation Society」の前身的なアルバムとしてレコーディングされていた「Four More Respected Gentlemen」。
これは完成テープがアメリカのリプリーズ・レコードにまで引き渡されながら、最終的にリリースされることなく、収録予定曲のうち「Johnny Thunder」とか「Picture Book」、「Monica」などの数曲が「Village Green〜」に流用されたものの、アルバムそのものは日の目を見ずに終わったという、文字通り幻のアルバムです。
予定通りリリースされていれば、それはこんな感じの作品でした。
A-1. She's Got Everything
A-2. Monica
A-3. Mr. Songbird
A-4. Johnny Thunder
A-5. Polly
A-6. Days
B-1. Animal Farm
B-2. Berkeley Mews
B-3. Picture Book
B-4. Phenomenal Cat
B-5. Misty Water
ちなみに現在では、これらは全て公式にリリースされた何がしかのアルバムに収録され、発表されていますから、ジャケット等を含めた『製品としてのLPレコード』はともかくとして、楽曲的にはもはや“幻の”でも無くなってしまいました。
もう1枚はキンクスとしての正規盤ではなくて、アメリカでの彼らのライセンスを持っていたリプリーズが、1973年に独自に編集して作ったアルバムなのですが、簡単に言えばRCAに移籍したキンクスが、パイに残していた60年代後期の未発表音源を、一枚に集約したような内容。
このタイトルが「The Great Lost Kinks Album」。
しかし、このアルバムは収録曲の版権を所有していた、悪名高きあのアラン・クレインのクレームによってすぐに廃盤。発売はされたけれども、あっという間に市場から消えた、いわば“準・幻のアルバム”みたいな作品といえます。
ただし、発売までに至らなかった「Four More Respected Gentlemen」とは違い、一度は店頭に並んだ本盤に関しては、絶対に手に入れることが不可能ということではなくて、今でも中古屋さんやネット通販で購入することは可能だし、現にブログ友達のいたち野郎さんも、昨年9月のエントリーで、遂に入手したことを報告されてました。
ただ問題は、これを今手に入れようとすると、ハッキリ言ってバカ高いこと。
お店によっては一万円くらいで売っている。
それに加えて、僕はレコードプレーヤーなるものを、とうの昔に処分してしまっているので、買ったところで聴けやしない。
こちらの希望としては、版権所有のアラン・クレインも2009年に亡くなっているんだから、何とかしてCD化してくれれば良いようなもんだけれども、それでも版権は息子だかに引き継がれているのかどうか、そんなことは知らないけど、CDとしても一向に出る気配はない。
欲しい。
でも出ない。
欲しいけど出ない。
それならいっそ作っちゃえ!
…というわけで、ここから先は「The Great Lost Kinks Album」の作り方。
基になるのは以下の曲目。
A-1. Till Death Do Us Part
A-2. There Is No Life Without Love
A-3. Lavender Hill
A-4. Groovy Movies
A-5. Rosemary Rose
A-6. Misty Water
A-7. Mister Songbird
B-1. When I Turn off the Living Room Light
B-2. The Way Love Used to Be
B-3. I’m Not Like Everybody Else
B-4. Plastic Man
B-5. This Man He Weeps Tonight
B-6. Pictures in the Sand
B-7. Where Did My Spring Go?
このうち、今現在で本当にレアと言える曲は実は少なくて、
B-2はパイ・レコードでの最後のアルバム「Percy」に収録。
A-3から7と、B-7の計6曲は、2004年に出た「The Village Green Preservation Society」のデラックス・エディションで公式に発表済み。
それから、A-2は現在出回っている「Something Else」のボートラ、B-3は同じく「Face To Face」のボートラ、B-4と5は「Arthur〜」のボートラとして、それぞれ入手可能。
B-1は、これは割合にレアだけど、2001年に出た「BBC Sessions」に収録されているので、これを採用することにしよう。
すると残りはA-1とB-6。
これらは残念ながら、今のところオリジナルの「The Great Lost Kinks Album」にしか、『正式には』収録されていない。
(2000年にドイツで出た「Neue Revue-The Great Lost Kinks Album」というブートレグCDには入っている)
アルバムとして手に入らないなら、ネットで探すしかないね。
ということで、Youtubeから2曲。
A-1. Till Death Do Us Part
B-6. Pictures in the Sand
これで曲は全部そろった。
あとはYoutubeの映像から音声だけを切り出して、曲順に沿って焼けば良い。
これで完成!
しかし便利な世の中になりましたなぁ。(なんて言うと、すごい年取っちゃった気分になるけど)
ビーチボーイズの、正真正銘“幻の”「スマイル」だって、あちこち探せば何とかそれらしい楽曲の寄せ集めが手に入るし、いやひょっとすると、そもそもこの情報化時代に“幻の”なんて言葉は、もはや死語と化しているのかも知れない。
本当はこのキンクスのアルバムだって、こんなに面倒な手間を掛けずに
[The Great Lost Kinks Album mp3]とかで検索すれば、もっと簡単に…
…うおーっと、いけねえ!
これ以上何か書くと、いろんなところに不都合が生じかねないので、自重しますが。
それにしても、こうして全曲まとめて聴くとこのアルバム、非常な良作ぞろいです。
「Village Green」のデラックスが出るまで、ここに収録された大半の曲が聴けなかったとは、アラン・クレインの罪は、こりゃあ相当重いね。
それに未だ公式未発表の2曲。
特に「Till Death Do Us Part」なんて、この時代のキンクス・フレーバーをたっぷり含んだ、いかにもレイらしい素晴らしい曲なのに、これ何で「Village Green DX」か、或いは「Picture Book」に入れなかったんかね?
さて、改めて言いたいのは、いくらロック・ミュージックが、言葉を換えれば一種の大衆芸能であるとはいえ、これはこれでひとつの立派な“文化”に他ならないということ。
その文化を公にする機会が、何らかの圧力によって奪われてしまえば、それに連なる次の文化が生まれてこなくなる可能性だってあるのだ。
これは、どう考えても、個人が所有権を主張してどうこうという次元の話ではないと思うのだがどうだろうか?
ビーチボーイズの「スマイル」とは違って、作者であるレイ・デイヴィスが発表を見送ったわけではないのである。
版権を得て、アルバムを出してお金を儲けるというならともかく、それもせずにリリースだけを拒み続けて、クレインという人は一体何がしたかったんだろうか?
僕はむしろ、ブートでもYoutubeでもなんでも、こういう良質な音楽を、違法と知りながら放出してくれるイリーガルな人に、最大限の拍手を贈りたいくらいだ。
読んでくれてありがとう!
↓ 励ましの1日1クリック ↓ ★お願いします★
↓ 出来ましたらこちらのほうも↓ ★お願いします★