CALENDAR
S M T W T F S
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< August 2017 >>
ARCHIVES
CATEGORIES
amazon
キボウのカケラ
LinkShare
アフィリエイトならリンクシェア
MOBILE
qrcode
SPONSORED LINKS
<< レイ・デイヴィス秋のUKツアーが終了 | main | Rock & Roll People >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - | pookmark |
Village Green 全曲解題12「Last of the Steam-Powered Trains」
 古き良きシュシュポッポ列車みたいな
 俺は血と汗にまみれた隊列だ
 どこへ行くのか
 どうしてここに来たのかもわからない
 俺は時代遅れの蒸気機関車の生き残りだ

 俺は古き良き変節漢
 友達はみんな中流階級のショボクレだ
 でも俺は博物館に住んでるんだぜ
 結構なことじゃないか
 俺は時代遅れの蒸気機関車の生き残りだ

 古き良き汽車ポッポみたいに
 この世を吹き飛ばさんばかりに息を切らせて
 死ぬまで走り続けてやりたいね
 俺は時代遅れの蒸気機関車の生き残りだ

 古き良きシュシュポッポ列車みたいな
 俺は煤にまみれた隊列だ
 このまま平穏な日々が続いたなら
 俺はどうにかなっちまいそうだぜ
 俺は時代遅れの蒸気機関車の生き残りだ
 俺は時代遅れの蒸気機関車の生き残りだ


元ネタは、1956年にハウリン・ウルフが出した「Smokestack Lightning」というブルース・ナンバー。
もともと“Smokestack”というのは、「煙突」という意味なので、蒸気機関車の雰囲気を出すのにはうってつけだったということでしょうか。出だしのギターリフが、機関車のあの「ポッポー!」という汽笛の感じを再現しているようにも聞えます。





ちなみに、このハウリン・ウルフという人は、1960年代当時のロック・ミュージシャンの間で、非常に人気の高かったブルースマンで、ストーンズやクリーム、ジミ・ヘンドリックス、スティーヴ・ウィンウッドからドアーズ、ツェッペリンあたりに至るまで、実に幅広いアーティストに影響を及ぼした人物です。
この「Smokestack Lightning」だけでも、ヤードバーズ、マンフレッド・マン、アニマルズ、ザ・フー、グレートフル・デッドといった、錚々たるグループにカヴァーされていますし、1971年に自らロンドンに渡ってレコーディングした「London Howlin' Wolf Sessions」というアルバムには、クラプトンやビル・ワイマン、チャーリー・ワッツ等のイギリスのミュージシャンが、大挙して参加しています。

初期のカヴァー曲は別にして、普段はあまりブルースには縁のなさそうなキンクスですが、それでもそうしたムーブメントへの目配せは、決して怠ってはいなかったようです。


さて、邦題では「蒸気機関車の最後」と訳されたこの曲ですが、歌詞の内容から察するに、そうではなくて「最後の蒸気機関車」、あるいは「蒸気機関車の生き残り」とでも訳すのが正しいのではないでしょうか。
かつて村を走っていた蒸気機関車も、いつの間にか電気機関車にとって代わられ、本人的にはまだまだ走り足りないけれども、今では博物館に展示されて、のんびりとした余生を送っている…
といったようなイメージです。

ただし、このように歌詞を言葉通りに受け取って聴いているリスナーは、少数派かも知れません。と言うのも、これは時代遅れの蒸気機関車に見せかけて、実はレイ・デイヴィスが、当時の自分の置かれた状況を、暗喩的に歌いあげたものという解釈が一般的だからです。

今ではキンクスの生みだした最高傑作として評価の高い、この「Village Green Preservation Society」ですが、リリースされた当時の売り上げは、芳しいものではありませんでした。また、バンドの置かれていた状況も、決して良好なものではなかったのです。
このあたりの事情は、前回の「All Of My Friends Were There」のところにもちょっと書きましたが、当時のキンクスには、アメリカでのプロモーション禁止に始まって、曲の版権に絡んだマネージメントとの争い、ピート・クエイフの脱退、チャートからの脱落と、まるで良いこと無しの状態が続いていました。

とりわけヒット曲が出ないことを、当時のレイ・デイヴィスは気にかけていたようで、インタビューでも
「僕は全てを憎んだ。イギリスではヒットマシーンになるか、それとも消えうせるか、そのどちらかを選ばなければならなかったからだ」
というようなことを語っています。

試みに、アルバム制作(1968年10月)前後のイギリス・チャートを見てみると、

 MM NME
 # 2 # 1 Sunny Afternoon (1966年 6月)
 # 6 # 8 Dead End Street (1966年11月)
 # 2 # 2 Waterloo Sunset (1967年 5月)
 # 5 # 5 Autumn Almanac (1967年10月)
  / #28 Wonderboy (1968年 4月)
 #10 #14 Days (1968年 6月)
 #28 #28 Plastic Man (1969年 3月)
(MM=メロディーメーカー、NME=ニュー・ミュージカル・エクスプレス)

というような推移であって、徐々に徐々にヒットチャートから遠ざかって行くことへの恐怖が、レイ・デイヴィスを怯えさせていたであろうことは想像に難くありません。

改めて歌詞を読むと、『俺は時代遅れだ』とうそぶきつつも、その一方では『死ぬまで走り続けてやりたい』、『このまま平穏な日が続いたら、俺はどうにかなっちまいそうだ』と、決して負け犬にはなりたくない、レイの本心のようなものも観て取れて、まだまだ悟りの境地には達していない、彼の心の揺れがうかがえます。
イギリスの伝統に目を向けて、いかにも“キンクス然”とした世捨て人をきどっていても、若干24歳だった彼の心の中には、言いようのない“焦り”が渦巻いていたことでしょう。


さて、ここで話はハウリン・ウルフに戻ります。
キンクスが『Village Green Preservation Society』を作っている、ちょうどその頃、ウルフも一枚のアルバムに取りかかっていました。
「Spoonful」「Smokestack Lightning」「The Red Rooster」といったブルースの名曲を、当時流行のサイケデリック風にアレンジしてレコーディングし直した『The Howlin' Wolf Album』がそれです。
自分の名前を冠して、一見自信作にも見えるタイトルですが、彼自身は、そのように流行に媚びを売るような行為を、決して心良くは思っていませんでした。
レコーディングを拒んで3日間自宅に閉じこもり、リリースに際してはジャケットにデカデカと
“This is Howlin' Wolf' s new album. He didn't like It. He didn't like his electric guitar at first either.”
(これはハウリン・ウルフのニューアルバムである。彼はこれを嫌っている。彼は始めエレクトリック・ギターも嫌っていた)
とプリントして憚りませんでした。

このあたり、当時むしろ積極的にロックに接近して「Electric Mud」(1968)という同種のアルバムをリリースした、マディ・ウォ−ターズとは真逆の意思を感じます。

そこでふと思うのですが、この「Last of the Steam-Powered Trains」を執筆しているレイ・デイヴィスの脳裏に、ハウリン・ウルフのこのような頑固な精神が、ひょっとしたらチラついていたのではなかったでしょうか?
“俺は時代遅れのブルース・シンガーの生き残りだが、流行になんて乗る気もないね”

若い世代のロック・ミュージシャンから慕われながら、他のブルースマンのように自分からそこに接近していくことなく、シカゴで黒人相手にひたすらブルースを歌い続けた気骨の人に、レイ・デイヴィスは自分自身の境遇を重ね合わせたのかも知れない。
仮にそうであるならば、レイは蒸気機関車の雰囲気を出すために、たまたまハウリン・ウルフの楽曲を拝借したのではなくて、逆に初めから時代におもねらないウルフのような頑固な姿勢を歌うつもりで「Smokestack Lightning」を引用し、次いで蒸気機関車のキャラクターを創出したのではないか。

曲の中の蒸気機関車が、“俺は時代遅れだ”と言いながら、そのことになぜか誇りを持っていそうな訳も、そう考えれば何となく得心がいくような気もするのですが。


いつもありがとうございます!
↓ 励ましの1日1クリック ↓ ★お願いします★
にほんブログ村 音楽ブログ ロックへ

↓ 出来ましたらこちらのほうも↓ ★お願いします★




| VillageGreen全曲解題 | 20:09 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
スポンサーサイト
| - | 20:09 | - | - | pookmark |
コメント
時代遅れの生き残り、すごい、名訳です!あらためて聴きなおしてしまいました。アルバムの中で、あまり意識してない曲ですが、エンディングはいつ聞いても、かっこよいですよね、ウルフとの関連も面白かったです。ヴィレッジグリーンアルバムは今でこそキンクスの代表作、名作となっていますが、ビーチボーイズの「ペットサウンズ」同様、発売何十年後経って突然、大評価されたという感があります。逆に何十年も不遇をかこったアルバムですね。

| ヨの字 | 2012/10/31 10:28 PM |
ヨの字さん

コメントありがとうございます。

この曲は「Smokestack Lightning」を基にして書かれたというのはよく言われる話なんですが、ではなぜハウリン・ウルフだったのか、というところまで掘り下げた記事が今までなかったので、ちょっとそこのところを考えてみました。
まあ、ちょっとしたお遊びみたいな部分もありますが。

>「ペットサウンズ」同様、発売何十年後経って突然、大評価された
やはり時代が追いついたということなのでしょうか。
流行というのはいずれ廃れるけれども、古き良きものを大事にしよう、みたいな普遍的な真実は、廃れることがありませんから。
| Pandaboy | 2012/11/01 2:30 PM |
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://kinkysound.jugem.jp/trackback/312
トラックバック