どういう訳か年々寒がりになりつつあるので、冬はとにかく大嫌い。その反動で夏が大好きになってきている。
冬は沢山着込めば暖かいけど、夏は裸になっても暑いじゃないか、と言う人もいて、まあそれは確かにそうかもしれないけれど、夏と冬とを比べたら僕は夏のほうが断然好きだ。
冬は何だか人に元気がない。
背中丸めて、トボトボと歩いては、時々手のひらにハーッとか息を吹きかけたり、思い出したように両手を交差させて自分で自分の二の腕のあたりをさすってみたり。
電車に乗ればゴホゴホと咳をする人がそこいらじゅうにいて、人ごみにもいたたまれず、そうかと思うと風邪は流行るは、インフルエンザは流行るは、餅を喉に詰まらせるは…と、総じてあんまり良いイメージがない。
そこにいくと夏は人が元気で良い。
暑い暑いと言いながら、どこか暑さを楽しんでいる。
全体的にバカンス気分が漂う上に、お祭りやスポーツで更に盛り上がるし、イベントはあるし、ビールは美味いし、水着の季節だし…で、まあ悪いこともちょっと位あるかもしれないけど、それでも冬と比べたら楽しいことこの上ない。
と言う考え方をもつ身としては、夏がかなり遠のいてきたこの季節ともなると、少しでも気温の高い日を見つけては、ほら、やっぱり夏は終わってないんだ!と自分に言い聞かせる毎日が続いている。
少々こじつけがましくなるけれども、1967年の「サマー・オブ・ラブ」の只中にデビューしたドアーズにとって、三作目のアルバム『太陽を待ちながら(Waiting for the Sun)』は、ちょうど真夏と冬との端境期にある作品と言えなくもない。
キンクス・ファンにとっては、オープニングの『Hello, I Love You』が『All Day and All of the Night』のパクリじゃないか、と言う一点のみで有名なアルバムだけれども、ドアーズというバンドの歴史を見れば、このアルバムの重要性はそんなに単純なものではない。
自らを“蜥蜴の王”と称したジム・モリソンは、バンド名を冠したファーストとそれに続く『幻の世界』の2枚のアルバムで、それまでのロックの常識を覆す、狂乱ともいえるほどの異様なパフォーマンスを繰り広げるけれども、逆に4作目以降となるとポップに走ったり、ブルースに根付いたりして実にバランスの良いスマートな作品を創り出すことになる。
それはもちろん、バンドのもう一人のコンポーザーであるロビー・クリーガーの方向性でもあったわけだが、その方向性とは、取りも直さず時代の要求だったに違いない。
やがて、時代に取り残されたかのようなモリソンは、パリに渡って客死してしまう。
ただし、それはまだ後のお話。
さて、これ「以前」とも、これ「以降」とも異なる雰囲気を持つ、このサード・アルバム。
それまでの路線を色濃く残す『The Unknown Soldier』『My Wild Love 』『Five to One』、スイート&ポップな『Hello, I Love You』『Wintertime Love』、そして穏やかながらもこのバンドにしか表現できない凄みを見せる『Summer's Almost Gone』『Yes, the River Knows』。
熱狂の夏は、もう過ぎ去ってしまったけれど、その輝きが失われることはないんだと語りかけるような佇まい。ドアーズが残したこの一枚は、夏の名残りのような美しいアルバムです。
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