デイヴ・デイヴィスが、「The Beautiful Old」と題された、新しいオムニバス作品に参加しているというニュースを見つけたので、色々と調べてみたんですが、どうもこれは、昔のいわゆるシート・ミュージックを復元させる試みのようで、中々面白いアルバムになっていそうな気がします。
ちなみに、このアルバムとは直接関係ない話になりますが、例えば、あのフォスターが、「おおスザンナ」とか「草競馬」なんかを作ったときに、それがどうやって大衆の間に広まるのかというと、今みたいにレコードとかCDがたくさん売れて広まった、という風には、当然ながらいかないですよね。
何しろ、エジソンが蓄音機を発明したのが1877年、円盤型のいわゆる“レコード盤”に至っては、ベルリナーという人の手によって、1887年にようやく完成するのですから、1864年に亡くなったフォスターの時代には、まだまだレコードなんてものは存在しなかった。
じゃあ、どうやって曲を流行させるかというと、これが“シート・ミュージック”つまり楽譜を売って広めるわけです。
出版社が楽譜を売って、それを楽団とか、あるいは一般の音楽愛好家が購入し、各地で演奏することで、やがて全国に広まるという、それが19世紀当時のヒットの仕方だったようです。
ただし、いくら曲がヒットしても、儲かるのは音楽出版社だけで、作曲家にはあまり実入りは無かったそうですが。
ただまあ、それでもフォスターなんかは、今でも“アメリカ音楽の父”として、名前が残っているからまだ良い方で、19世紀から20世紀の初頭にかけては、こういうレコード以前のシート・ミュージックを手がける、無名の音楽家が、アメリカやイギリスに沢山いたんですね。
今回デイヴが参加したのは、そのように“楽譜”という形でしか残されていない、半ば埋れた古典的なポピュラー音楽を、現代のミュージシャンによって蘇生させるという、ちょっと芸術的なプロジェクトです。
参加ミュージシャンも多岐にわたっていて、以下にあるように、The Bandのガース・ハドソンがほぼ前曲に参加しているほか、グラハム・パーカーらの名前も見えます。
1.The Band Played On (1895)
Christine Collister, Richard Thompson, Garth Hudson
2.A Perfect Day (1910)
Kimmie Rhodes
3.The Flying Trapeze (1867)
Graham Parker, Garth Hudson
4.Love's Old Sweet Song (1884)
Heidi Talbot, John McCusker
5.Long Time Ago (1839)
Jimmy LaFave, Richard Bowden
6.Silver Dagger (1917)
Jolie Goodnight, Richard Bowden
7.The Dying Californian (1854)
Carrie Elkin, Kimmie Rhodes
8.The Rosary (1898)
Garth Hudson
9.Come Josephine in My Flying Machine (1911)
Will Sexton, Simone Stevens, Garth Hudson
10.Somewhere a Voice is Calling (1911)
Kimmie Rhodes, Garth Hudson
11.After the Ball (1892)
Dave Davies, Garth Hudson
12.I Love You Truly (1901)
Jolie Goodnight, Garth Hudson
13.Beautiful Ohio (1918)
Kim Richie, Garth Hudson
14.Just A-Wearyin' For You (1901)
Eric Bibb, Garth Hudson
15.Ah! Sweet Mystery of Life (1910)
Kimmie Rhodes, Richard Greene
16.Let Me Call You Sweetheart (1910)
Simone Stevens, Will Sexton
17.Home Sweet Home (1823)
Christine Collister
18.The Last Rose of Summer (1805)
Gabriel Rhodes, Richard Greene, Richard Bowden
19.Till We Meet Again (1918)
Gabriel Rhodes, Garth Hudson, Richard Bowden
デイヴは11曲目の「After the Ball」に参加していますが、面白いのは、彼がギターではなく、ヴォーカリストとして起用されているという点でしょう。
作品の特設サイトには、制作者の言葉として、
「プロジェクトの完成までに一年以上が費やされた。私たちは正確に創りあげたかったので、各曲に最も適したシンガーと、ミュージシャンを選ぶことを心掛けた」みたいなことが書いてあるので、ということは、デイヴは本当に彼のヴォーカルが買われて抜擢されたようですね。
同じサイトの解説によれば、レコーディングの際の楽器なども、各曲が作られた当時に存在したもの以外は使用しなかったそうで、そうしたこだわりの中でのデイヴ起用は、これは非常に意味あるものに思えます。
ひょっとするとこれは、ミュージシャンとしての彼の新局面を開くことになるかも知れない、などと書くと、それは流石にオーバーでしょうか?
デイヴの参加作品は
こちらのページで試聴できますが、なるほど彼のあの高くてか弱い独特の声が、この19世紀末の楽曲に見事にマッチしていて、いやあ、この制作陣の素晴らしいセンスには思わず脱帽してしまいます。
さて、アルバム「The Beautiful Old」のリリースは6月の第1週とのことですから、するとそれは、新作ソロアルバム「I Will Be Me」のリリース日、6月4日に丸かぶりです。
しかもその時期、本人はアメリカ・ツアーの真っ只中と、なぜかここに来て、いきなりノリノリになっちゃったデイヴ先生。
今までみたいな宗教がらみの話題じゃなくて、音楽活動のニュースがたくさん聞けるのは嬉しいけれど、ソロ活動が順調過ぎて、彼のキンクス拒否病が一層進行するんじゃないかと、ファンとしてはそこのところが心配になります。
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